福岡高等裁判所 昭和26年(ネ)466号 判決
控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和二十四年三月二十五日なした『大分市大字駄原字中原六百二十三番地の一、田三反二畝十五歩の農地買収計画は取消すべきではない』との裁決はこれを取消す。大分市府内農地委員会が右農地について定めた買収計画はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述は、控訴代理人において「仮に本件農地が小作地であるとしても、それは次の理由によつて超過小作地ではない。本件買収計画は自作農創設特別措置法第三条第一項第二号の規定に基き現状買収として定められたもので、本件農地の所属区域における同条同項同号の法定保有面積は五反歩であるところ、大分市府内農地委員会は控訴人所有の大分市大字駄原字中原六百五十一番田一反六畝十二歩、同所六百五十二番田二十七歩、同所六百七十番田二反五畝歩、同市字福田寺五百八十四番の三、田一反一畝二十一歩の内八畝二十一歩を控訴人の保有小作地と認め、これ等と本件農地とを合算すれば五反歩を超えるので超過小作地として本件買収計画を定めた。しかし保有小作地と認められた右農地の内六百五十一番及び六百五十二番の二筆は昭和二十年八月以降本件買収計画樹立当時まで控訴人の義弟訴外植木勝所有の農地一反八畝二十七歩と便宜上交換的に耕作していたもので、小作契約乃至使用料の取極めもなかつたのであるから、前示二筆は控訴人の自作地とみなすべきである。そうしてこれを自作地とみるときは、本件農地は超過小作地とならないから本件買収計画は違法である」と陳述し、被控訴代理人において「本件買収計画が控訴人主張の条項に基く現状買収として定められたこと、本件農地の所属区域における法定保有面積が五反歩であること、府内農地委員会が控訴人主張の農地を控訴人の保有小作地と認めたこと、及び控訴人がその主張の二筆の農地を義弟植木勝所有の農地一反八畝二十七歩と交換的に耕作したことは認める。しかし交換的耕作であるから自作地であるとはいえないから、控訴人主張の二筆は小作地である」と陳述した外、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する(証拠省略)。
三、理 由
当裁判所は次の判断を追加する外原判決と同一の理由によつて控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきものと認め、その理由をここに引用する。
一、当審における控訴本人の供述中原判決の認定にそわない部分は原審証人友永新一、同甲斐正夫の各証言に照し信用することができない。当審において新に提出されたその他の各証拠によつては該認定を左右するに足らない。
二、控訴人が昭和二十年八月より本件買収計画樹立当時まで、その買収計画の際控訴人の保有小作地と認められた農地の内控訴人主張の二筆を義弟たる訴外植木勝に耕作させ、これと交換的に同訴外人所有の農地を控訴人において耕作し、いわゆる交換的耕作をしていたことは当事者間に争のないところである。
控訴人は右交換的耕作については小作契約乃至使用料の取極がないから右二筆の農地は控訴人の自作地とみなすべきであると主張する。しかしこのような農地の交換的耕作は農地所有者相互の間で互に相手方所有の農地を自己の耕作に供しその対価として自己所有の農地を相手方に耕作させるものであつて、少くも賃借権に基き相手方所有の農地を自己の耕作の業務に供するものと認めるのが相当であるから、その農地は自作農創設特別措置法第二条第二項にいわゆる小作地に該当するものといわなければならない。従つて控訴人主張の交換的耕作に供せられた前記二筆の農地は小作地と認むべきであるから、控訴人の主張は理由がない。
そこで原判決は相当であつて本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 森静雄 竹下利之右衛門 高次三吉)
原審判決の主文および事実
一、主 文
原告の請求はこれを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は「被告が昭和二十四年三月二十五日なした大分市大字駄原字中原六百二十三番地の一田三反二畝十歩の農地買収計画は取消すべきでないとの裁決はこれを取消す。大分市大字駄原字中原六百二十三の一田三反二畝十五歩にかかる農地買収計画はこれを取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として「大分市駄原字中原六百二十三の一田三反二畝十五歩は原告の所有であるが、訴外大分市府内農地委員会は超過小作地であるとして自作農創設特別措置法第六条第四項にもとずいて買収計画を樹立したので原告は適法に同委員会に異議申立をしたが却下された。そこで更に被告に対し適法に訴願したところ被告は昭和二十四年三月二十五日本件農地は超過小作地で自作農創設特別措置法第六条第四項にあたるという理由で買収計画から除外すべきでないとの裁決をなし、右裁決書は昭和二十四年四月十八日原告に送達された。併し本件農地は小作地ではないので、ここに法定期間内に右裁決の取消並に本件農地を右買収計画から除外することを求めるため本訴に及んだ。」とのべた(立証省略)。
被告訴訟代理人は「原告の請求はこれを棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」旨の判決を求め、答弁として「原告主張の請求原因のうち本件農地に対して原告主張のような買収計画、異議、訴願、裁決のあつたこと並に裁決書送達の日が原告主張の通りであることは認めるが、その他は否認する。本件農地は大正六年頃原告において訴外植木藤平に小作させ、以来転々として数小作人が変つたが、昭和二十年十一月から同二十一年六月まで訴外木本謙一が同年同月以降は訴外友永新一が小作して現在に至つて居り、この間原告は全く自作したことがない。従つてこれを小作地と認め、原告の小作地保有面積を超えるものとしてたてた買収計画も、また右買収計画を取消すべきでないとした裁決も適法であつて、原告の本訴請求は失当である。」とのべた(立証省略)。